結合組織の細胞とその特徴
結合組織を構成するのは細胞成分と、細胞が分泌する線維成分及び細胞外基質である。ここでは結合組織に存在する代表的な細胞について説明する。
線維芽細胞
繊維芽細胞は結合組織で最も数の多い細胞で紡錘状の形をとっている。繊維成分のエラスチンやコラーゲン、無定形基質のプロテオグリカンといった細胞外成分のほとんどを分泌する。そのため粗面小胞体・ゴルジ体が大変発達している。
脂肪細胞
脂肪細胞の特徴
脂肪細胞は脂肪組織に存在する細胞であるが、脂肪組織には脂肪細胞とともにマクロファージも存在している。
間葉系幹細胞から脂肪細胞に分化するためには間葉系肝細胞にインスリンが作用しインスリン様成長因子のシグナルが入ることが必要である。インスリンとインスリン様成長因子は体内で最も代謝を活性化させる物質である。
白色脂肪細胞は1個の大きな脂肪滴をもちトリグリセリドを蓄えており、核は偏在している。またアディポカインを分泌する内分泌細胞でもある。分泌されるレプチンは基本的に視床下部弓状核に作用して摂食抑制を担う。アディポネクチンはインスリンの感受性を上昇させる。
褐色脂肪細胞は多数の脂肪滴をもち核は中央にある。ミトコンドリアが発達しておりUCP1は H+の移動とATP産生を脱共役させて熱を産生する。
ちなみに、マクロファージは炎症性サイトカインであるTNF-α、IL-6、PAI1を分泌する。PAI1は血管障害を起こしやすくする。
脂肪細胞とインスリンの関係
インスリン刺激によりグルコースを取り込む時に必要なトランスポーターがGLUT4であるが、GLUT4は白色脂肪細胞は骨格筋細胞のみに存在している。
インスリンによるシグナルはAMPKを活性化させることによってグルコーストランスポーターを細胞膜に輸送し、グルコースの取り込みを上昇させる。2型糖尿病の治療薬であるメトフォルミンはAMPKを活性化することでグルコースの取り込みを促進することで薬理作用を発揮する。肥満になるとアディポネクチンの分泌が減りインスリンの感受性が減る。また炎症性サイトカインの分泌が増え血栓も作られやすくなる。レプチンの分泌は増える。
肥満細胞
マスト細胞は異染性を示す細胞でトルイジンブルーで染めると赤にそまる。マスト細胞が異染性を示すのはヘパリンを含んでいるためである。
マスト細胞はFcεR1を介してIgEと結合する。抗原とIgEが結合したものが架橋して細胞内にシグナルを入れるとまず1~5分単位でセロトニン、ヒスタミン、ヘパリンといった顆粒メディエータ―の放出(図1)が起こる。その後5~30分単位で脂質メディエータ―の放出がおこる。脂質メディエータ―の放出は、細胞膜のリノール酸からアラキドン酸が放出されCOXを介してプロスタグランジンが、リポキシゲナーゼを介してロイコトリエンが放出されることによっておこる。その後TNF-αやIL-4・IL-13といったTh2系のサイトカインが放出されることで、組織が炎症を起こし、好酸球が誘導され好酸球浸潤による慢性炎症がおこる。これが1型アレルギーの遅発反応である。
【図1】
解熱鎮痛剤であるNSAIDsはCOXをターゲットにして痛みの原因となるプロスタグランジンを放出させないことを目的とした薬である。COX1は胃壁の防御のために必須であるためCOX2の選択的阻害薬の方が良いという意見があったが、近年COX2選択的阻害薬は心筋梗塞のリスクを上げることが分かってきた。
ヒスタミンの効果は血管透過性亢進、ヘパリンは抗血管凝固、セロトニンは血管収縮である。アナフィラキシー反応で人が死ぬのは気管から分泌顆粒が大量に出され気管平滑筋の収縮による呼吸不全が原因である。そのためO2投与と気道確保とともに即座のアドレナリンの投与が大切である。
アスピリン喘息はNSAIDsが原因の喘息でアレルギー反応ではない。
マクロファージ
マクロファージは血液の単球由来の細胞で単球が組織へ行ってマクロファージに分化する。マクロファージは組織が違えば全く機能も違い、組織に固有の名前を持っている。例えば肝臓ではクッパ―細胞、骨では破骨細胞、脳ではミクログリアと呼ばれている Fc受容体、補体受容体をもち貪食能を発揮する。貪食したものは食胞となりリソソームと融合してファゴリソソームとなって分解される。
形質細胞
形質細胞は血中のBリンパ球から分化した細胞で血管から出た後は組織に居住し車軸状の核を持っている。抗体を産生するためrERが非常に豊富で体液性免疫にかかわる。
参考:ワートンゼリー
胎児性結合組織は臍帯の結合組織である。母体と胎児をつなぐ唯一の通路でありそこには血管が通っている。そのため臍帯が折れないようにグリコサミノグリカンを含むマトリックス が豊富に存在している。そのような状態のことをワ―トンゼリーという。
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