<組織細胞生物学各論>内分泌ー副腎ー

副腎の基礎

副腎皮質の総論

副腎は皮質と髄質に分けられる。
皮質はさらに球状帯・束状帯・網状帯に分けられる。
球状帯では鉱質コルチコイドが分泌される。代表例はアルドステロンで、その分泌はアンギオテンシンⅡが刺激する。アルドステロンは腎臓の遠位曲尿細管に作用する。
束状帯では糖質コルチコイドが分泌される。代表例はコルチゾールで、その分泌はACTHが刺激する。また、その作用は血糖値の上昇など様々である。
網状帯では男性ホルモンが分泌される。その分泌を刺激するのはACTHである。

副腎髄質の総論

髄質は交感神経の節後ニューロンに相当し、ノルアドレナリンやアドレナリンといったカテコールアミンを分泌する。副腎髄質のクロム親和細胞はクロム反応に陽性である。ちなみに交感神経節後線維が分泌するのはノルアドレナリンであり、アドレナリンを分泌するのは副腎髄質のみである。
皮質の3層と髄質を顕微鏡で観察する際は以下のように見分けをつける。まず被膜直下で球形の細胞が集塊をなして存在しているところが球状帯である。その下の層で柵状にあまり染まっていない細胞が存在するところが束状帯である。あまり染まっていない理由となる物質はステロイドホルモンである。その層の下で好酸性に染まる細胞集団は網状帯である。さらにその層の下には好塩基性に染まり中心静脈の確認できる副腎髄質の層が確認できる。

副腎の血管支配

副腎を栄養している動脈は下横隔膜動脈・腹大動脈・腎動脈の3つである。これらのうち最初の2つは皮質を栄養しており、後ろの1つは髄質を栄養している。その後血液は中心静脈、左右副腎静脈を通り、左側は左腎静脈へ、右側は大静脈へ行く。

副腎皮質の内分泌

球状帯

球状帯から分泌されるホルモンはアルドステロンである

球状帯から分泌される代表的な物質はアルドステロンである。この分泌にはACTHは全く関与せず、関与するのはアンギオテンシンⅡである。アルドステロンの作用はナトリウムイオン・水の再吸収とカリウムイオン・水素イオンの排出である。そのため、アルドステロンが出すぎると低カリウム血症・代謝性アルカローシスとなる。

原発性アルドステロン症について

アルドステロンが出すぎる疾患をアルドステロン症というが、原因の違いによって原発性と二次性の二種類に分けられる。その鑑別は血症におけるレニンの活性を示す値であるPRAによって行うことができる。
原発性アルドステロン症とは、副腎皮質にアルドステロンを産生する腫瘍ができることによって血漿のアルドステロン濃度が高くなる病態である。その結果代謝性アルカローシス・低カリウム血症とともに高血圧も起こる。原発性ではアルドステロンを産生する腫瘍がおおもとの原因であるため、フィードバック機構が働いて、レニンの分泌が抑えられる。そのため原発性アルドステロン症では血漿アルドステロン濃度は高くなる一方で、PRAは低くなる。

二次性アルドステロン症について

一方、二次性アルドステロン症ではもともとアルドステロンを産生している細胞がどこかで増殖するわけではく、何らかの原因でおこるRAA系の亢進によって結果的にアルドステロンが高くなっている病態である。二次性アルドステロン症をおこす原因の1つとしてバーター症候群がある。バーター症候群はNa-K-2Cl共輸送体の異常によっておこる。そのためナトリウムイオンがうまく吸収されず血圧は正常かやや低い。その結果、レニンが過剰に分泌されてアルドステロンの分泌が亢進するため、当然、代謝性アルカローシス・低カリウム血症などを引き起こす。原発性との違いはPRAが高値を示す点である。ループ利尿薬はNa-K-2Cl共輸送体に対するブロッカーであり、これを使用するとバーター症候群と同じような病態を示すようになるため、偽性バーターと呼ばれる。
(※Liddle症候群については腎臓で)

束状帯

束状帯から分泌されるホルモンはコルチゾールである

束状帯から分泌される代表的なものはコルチゾールである。その分泌を刺激するのはACTHである。コルチゾールの作用は多種多様に及ぶが、飢餓状態において生体にプラスになるように働くことが多い。飢餓状態でないときのコルチゾールの過剰分泌はインスリン抵抗性など解糖能の低下を表す。また、コルチゾールは胎生第8か月以降のⅡ型肺胞細胞における肺サーファクタント産生に必要である。そのため、かつては7か月未満の早産児は窒息死していたが、現在はコルチゾールの投与によって呼吸管理が可能となっている。

コルチゾールが過剰となる病態とその症状

クッシング症候群とは何らかの原因によってコルチゾールが過剰となる一連の病態のこと。一方、クッシング病とは下垂体の腫瘍が原因でコルチゾールが過剰となること。そして、過剰なコルチゾールの分泌によって中心性肥満や満月様顔貌などの外見的な所見がみられることをクッシング徴候という。

副腎髄質

副腎の髄質が分泌するものはノルアドレナリンとアドレナリンである。これらを産生する細胞はクロム親性細胞であり、クロム親性反応に陽性である。このうちノルアドレナリン産生細胞の方がクロム親性反応に強く反応する。
褐色細胞腫では上記のカテコールアミンを大量に分泌する。カテコールアミンの過剰がおこると血糖上昇・血圧上昇など様々な代謝が過剰に亢進する。カテコールアミンはやがて代謝され尿中バニリルマンデル酸となり、尿中バニリルマンデル酸の尿中濃度が高くなる。

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