過敏性肺臓炎の病因、症候、診断と治療について

過敏性肺臓炎とは

過敏性肺臓炎とは、真菌などを反復吸引した結果、これらの物質を抗原として認識し感作され、アレルギー反応に基づいて発症するびまん性肉芽腫性間質性肺炎のことである。強調されることは少ないが、病変部位が間質であることを意識しておくと症状や診断の理解が簡単になる。
特定の場所、時期に症状を示し、入院などの環境の変化によって症状が自然に改善するが、帰宅などによって再び抗原に暴露されると再び症状が表れてくることが特徴であり、CBTや国家試験の問題もこれらの特徴を反映した問題であることが多い。

過敏性肺臓炎の原因(病因)

過敏性肺臓炎の病態の基本は上記の通り、抗原の反復吸引によるアレルギー反応であり、Ⅲ型、Ⅳ型のアレルギー反応が関与している。これらが原因でびまん性肉芽腫性間質性肺炎を発症するのである。
ここで区別するべき疾患として、「好酸球性肺炎」というものがある。この疾患も病態の基本にアレルギー反応があるが、過敏性肺臓炎との大きな違いとして好酸球性肺炎に関与しているアレルギー反応はⅠ型とⅢ型である。
この違いを理解しておくことが定期テストやCBT、国家試験の問題を解くうえで非常に大切である。また、この違いを理解すしておけば、これらの疾患を深く理解することができる。
過敏性肺臓炎の病態の基本として上記の事を理解しておけば、あとは抗原の違いによっていくつかのタイプに分類できることを覚えておけばCBTレベルであれば完璧だ。抗原の違いによる分類を以下に示す。
Ⅰ型、Ⅲ型、Ⅳ型アレルギー反応についての詳細は免疫学で復習してほしい。

【抗原の違いによる過敏性肺臓炎の分類】

  1. 夏型過敏性肺炎
    高温多湿な居住環境に増殖した真菌(トリコスポロン)が原因抗原である。過敏性肺臓炎の多くはこの夏型過敏性肺炎である。
  2. 農夫肺
    牧草に生えた高熱性放射筋が原因抗原である。熊本や鹿児島に多い。
  3. 鳥関連過敏性肺炎
    ハトやインコの抗原が原因である。比較的慢性の経過をとることが多い。
  4. 加湿器肺
    加湿器中の水を交換せずに放置した結果、そこで増殖した真菌や微生物が原因抗原となる。
  5. イソシアネート肺
    化学物質であるイソシアネートが原因抗原である。

過敏性肺臓炎の症状(症候)

過敏性肺臓炎は、特定の場所や時期における抗原暴露によって発熱、乾性咳嗽、呼吸困難を示す。慢性化すると労作時呼吸困難を示す。いずれにおいてもfine crackles(捻髪音)を聴取する。これらは過敏性肺臓炎の病変部位が間質であることを考えれば理解しやすい。

過敏性肺臓炎の診断

過敏性肺臓炎の確定診断は抗原吸入誘発試験が陽性であること、または、特異抗原の検出など免疫学的試験が陽性であること、により行うことが有効である。
また、それらに加えて、胸部X線、CTで間質性肺炎像(スリガラス様陰影、粒状影など)を示すこと、環境の変化により症状が軽快すること、BALF(気管支肺胞洗浄液)で、著名なT細胞数の増加やCD4/CD8比の変動(Ⅲ、Ⅳ型アレルギー反応を反映)などを参考にして診断する。

過敏性肺臓炎の治療

治療は基本的には抗原への暴露を避けることが基本となる。また、難治例ではステロイドが著効する場合がある。

例題

例題1

65歳の男性。5月下旬より咳が2週間ほど続いている。去年もクーラーをつけ始めた後くらいから咳が出始めたという。尿中トリコスポロン抗原陽性。診断はどれか。

  1. 気管支喘息
  2. 夏型過敏性肺臓炎
  3. 間質性肺炎
  4. 誤嚥性肺炎
  5. 結核

答え2

解説

5月下旬より咳が続いていること、昨年も同様の症状が認められること、より過敏性肺臓炎を推測しないといけない。そして、尿中トリコスポロン抗体が陽性であることより、夏型過敏性肺臓炎であることが分かる。
CBTレベルでは、尿中トリコスポロン抗体が夏型過敏性肺臓炎の原因抗原である、ということまでは必ずしも覚えておく必要はないかもしれない。実際にこの問題でも、過敏性肺臓炎ということが分かれば選択できるようになっている。ただし、CBTで過敏性肺臓炎がきかれる場合、夏型過敏性肺臓炎がテーマになることが多いので覚える余裕があれば覚えた方が良い。

例題2

夏型過敏性肺炎の診断に有用なものはどれか。

  1. 帰宅誘発試験
  2. 末梢血好酸球増加
  3. 白血球減少
  4. 補体低値
  5. 胸水貯留

答え1

解説

帰宅誘発試験とは、過敏性肺臓炎が疑われる患者を帰宅させて抗原に暴露させることで症状を出現させて過敏性肺臓炎であるかどうかを確認する方法である。過敏性肺臓炎は環境の変化により抗原に暴露されなければ症状が軽減する。当然、帰宅により抗原に暴露されれば症状が出現するので、過敏性肺臓炎の検査には帰宅誘発試験がとても有効である。

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